コントロールでキーを押したり離したりしたときに発生するイベント(KeyDown,KeyUp,KeyPressイベント)
ユーザーフォームに設置したコントロールでキーを押したときに発生するイベントが KeyDown イベントおよび KeyPress イベント、そしてキーを離したときに発生するイベントが KeyUp イベントです。ここでは Excel のユーザーフォームで KeyDown、 KeyUp および KeyPress イベントがどのようなときに発生するのかやイベントが発生したときに呼び出されるイベントプロシージャの記述方法について解説します。
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目次
ユーザーフォームにおけるKeyDownおよびKeyUpイベントとは
ユーザーフォームにおける KeyDown
イベントおよび KeyUp
イベントがどのような時に発生するのか、また発生したときのイベントプロシージャの記述方法について解説します。
どのようなときにイベントが発生するのか
KeyDown
イベントはユーザーフォームまたはコントロールにフォーカスがあるときにキーを押すと発生します。
KeyUp
イベントはユーザーフォームまたはコントロールにフォーカスがあるときにキーを離すと発生します。
このイベントは ANSI キーを押したときにも発生しますが、主にファンクションキーなどの拡張キーや HOME や矢印などの移動キー、数字キーなどのキーが押されたかどうかを検出するのに使用されます。 ANSI キーを押したときの処理は KeyPress
イベントが使用されます。
KeyDownおよびKeyUpイベントのイベントプロシージャ
KeyDown
イベントおよび KeyUp
イベントに対するイベントプロシージャは次のような形式となっています。
Private Sub オブジェクト_KeyDown(ByVal KeyCode As MSForms.ReturnInteger, ByVal Shift As Integer) End Sub
Private Sub オブジェクト_KeyUp(ByVal KeyCode As MSForms.ReturnInteger, ByVal Shift As Integer) End Sub
イベントプロシージャの引数である KeyCode
には押されたキーのコードを表す数値が入力されています。イベントプロシージャの中で 0 を設定することでキーが押されていないことにすることができます。
引数の Shift
の値を参照することで Shift キー、 Ctrl キー、および Alt キーが押されているかどうか参照できます。いずれも押されていない場合は 0 となります。
定数 | 値 | 説明 |
---|---|---|
fmShiftMask | 1 | Shift キーが押されました |
fmCtrlMask | 2 | Ctrl キーが押されました |
fmAltMask | 4 | Alt キーが押されました |
対象のコントロールにフォーカスがある状態でキーが押されると KeyDown
イベントが発生し、キーが離されると KeyUp
イベントが発生し、それぞれのイベントに対するイベントプロシージャが呼び出されます
それでは簡単なサンプルで試してみます。ユーザーフォームにテキストボックスを設置しました。
テキストボックスに対する KeyDown
イベントのイベントプロシージャの中で、入力されたキーのキーコードを調べ、数字の 0 から 9 の文字のキー、または BackSpace キー以外のキーが押された場合はキーの入力を無効にします。( Excel では文字毎のキーコードを定数で定義しており、その定数と比較しています。定数の一覧はこのページの最後に記載しています)。
Option Explicit Private Sub TextBox1_KeyDown(ByVal KeyCode As MSForms.ReturnInteger, ByVal Shift As Integer) If KeyCode <> vbKeyBack And (KeyCode < vbKey0 Or KeyCode > vbKey9) Then KeyCode = 0 End If End Sub
これでコードの記述は完了です。では実際に試してみます。「Sub/ユーザーフォームの実行」をクリックしてください。
ユーザーフォームが表示されました。
このテキストボックスには、キーボードに表示されている数字キーを押して数字をの文字を入力することはできますが、それ以外の文字のキーを押しても入力されません。( BackSpace キーだけは押すと文字を削除できます)。
今回は KeyDown
イベントのイベントプロシージャだけを使用しましたが、フォーカスがあるコントロールに対してキーを押したときに何らかの処理を行うことができました。
ユーザーフォームにおけるKeyPressイベントとは
ユーザーフォームにおける KeyPres
イベントがどのような時に発生するのか、また発生したときのイベントプロシージャの記述方法について解説します。
どのようなときにイベントが発生するのか
KeyPres
イベントはユーザーフォームまたはコントロールにフォーカスがあるときに ANSI キーを押すと発生します。 KeyDown
イベントと異なり ANSI キーを押したときだけイベントが発生します。
KeyPresイベントのイベントプロシージャ
KeyPres
イベントに対するイベントプロシージャは次のような形式となっています。
Private Sub オブジェクト_KeyPress(ByVal KeyAscii As MSForms.ReturnInteger) End Sub
イベントプロシージャの引数である KeyAscii
には押されたキーのコードを表す数値が入力されています。イベントプロシージャの中で 0 を設定することでキーが押されていないことにすることができます。
対象のコントロールにフォーカスがある状態で ASCII キーが押されると KeyPress
イベントが発生しイベントプロシージャが呼び出されます
それでは簡単なサンプルで試してみます。ユーザーフォームにテキストボックスを設置しました。
テキストボックスに対する KeyPress
イベントのイベントプロシージャの中で、入力されたキーを大文字に変換して表示します(キーコードを文字に変換したあと、文字を大文字に変換し、変換した文字をキーコードに変換して KeyAscii
に設定しています)。
Option Explicit Private Sub TextBox1_KeyPress(ByVal KeyAscii As MSForms.ReturnInteger) KeyAscii = Asc(StrConv(Chr(KeyAscii), vbUpperCase)) End Sub
これでコードの記述は完了です。では実際に試してみます。「Sub/ユーザーフォームの実行」をクリックしてください。
ユーザーフォームが表示されました。
このテキストボックスにフォーカスがあるときにアルファベットの文字をキーボードで押すと、大文字に変換されてテキストボックスに表示されます。
KeyDown、KeyUp、KeyPressイベントの発生する順番
コントロールにフォーカスがあるときにキーを押すと、 KeyDown
イベント、 KeyUp
イベント、 KeyPress
イベントが発生します。どの順番にイベントが発生するのかを確認してみます。
ユーザーフォームにテキストボックスを設置しました。
テキストボックスに対する 3 つのイベントのイベントプロシージャをそれぞれ次のように記述しました。イベントが発生するとイミディエイトウィンドウにでイベントの種類を出力します。
Option Explicit Private Sub TextBox1_KeyDown(ByVal KeyCode As MSForms.ReturnInteger, ByVal Shift As Integer) Debug.Print "KeyDown" End Sub Private Sub TextBox1_KeyUp(ByVal KeyCode As MSForms.ReturnInteger, ByVal Shift As Integer) Debug.Print "KeyUp" End Sub Private Sub TextBox1_KeyPress(ByVal KeyAscii As MSForms.ReturnInteger) Debug.Print "KeyPress" End Sub
何かキーを押してください。( KeyPress
イベントが発生するように ASCII 文字のキーを押してください)。
イミディエイトウィンドウを確認すると、 KeyDown
、 KeyPress
、 KeyUp
の順番でイベントが発生することが確認できます。
キーコード毎に定義されている定数
Excel ではキーコードで表される数値毎に定数が定義されており、キーコードの値がどの文字を表すのか調べる場合に数値を比較する代わりにキーコードの値と定数を比較することができます。
定数 | 値 | 説明 |
---|---|---|
vbKeyLButton | 0x1 | 左マウス ボタン |
vbKeyRButton | 0x2 | 右マウス ボタン |
vbKeyCancel | 0x3 | Cancel キー |
vbKeyMButton | 0x4 | マウスの中央ボタン |
vbKeyBack | 0x8 | Backspace |
vbKeyTab | 0x9 | Tab キー |
vbKeyClear | 0xC | Clear |
vbKeyReturn | 0xD | Enter |
vbKeyShift | 0x10 | Shift キーが押されました。 |
vbKeyControl | 0x11 | Ctrl キーが押されました。 |
vbKeyMenu | 0x12 | メニュー キー |
vbKeyPause | 0x13 | Pause |
vbKeyCapital | 0x14 | Caps Lock |
vbKeyEscape | 0x1B | Esc キー |
vbKeySpace | 0x20 | Space キー |
vbKeyPageUp | 0x21 | PageUp |
vbKeyPageDown | 0x22 | PageDown |
vbKeyEnd | 0x23 | End |
vbKeyHome | 0x24 | Home |
vbKeyLeft | 0x25 | ← |
vbKeyUp | 0x26 | ↑ |
vbKeyRight | 0x27 | → |
vbKeyDown | 0x28 | ↓ |
vbKeySelect | 0x29 | Select |
vbKeyPrint | 0x2A | PrintScreen |
vbKeyExecute | 0x2B | Execute |
vbKeySnapshot | 0x2C | Snapshot キー |
vbKeyInsert | 0x2D | Insert キー |
vbKeyDelete | 0x2E | Delete キー |
vbKeyHelp | 0x2F | Help |
vbKeyNumlock | 0x90 | Num Lock |
次の定数は A から Z までのキーを表します。
定数 | 値 | 説明 |
---|---|---|
vbKeyA | 65 | A キー |
vbKeyB | 66 | B キー |
vbKeyC | 67 | C キー |
vbKeyD | 68 | D キー |
vbKeyE | 69 | E キー |
vbKeyF | 70 | F キー |
vbKeyG | 71 | G キー |
vbKeyH | 72 | H キー |
vbKeyI | 73 | I キー |
vbKeyJ | 74 | J キー |
vbKeyK | 75 | K キー |
vbKeyL | 76 | L キー |
vbKeyM | 77 | M キー |
vbKeyN | 78 | N キー |
vbKeyO | 79 | O キー |
vbKeyP | 80 | P キー |
vbKeyQ | 81 | Q キー |
vbKeyR | 82 | R キー |
vbKeyS | 83 | S キー |
vbKeyT | 84 | T キー |
vbKeyU | 85 | U キー |
vbKeyV | 86 | V キー |
vbKeyW | 87 | W キー |
vbKeyX | 88 | X キー |
vbKeyY | 89 | Y キー |
vbKeyZ | 90 | Z キー |
次の定数はキーボードの数字キーを表します。
定数 | 値 | 説明 |
---|---|---|
vbKey0 | 48 | 0 キー |
vbKey1 | 49 | 1 キー |
vbKey2 | 50 | 2 キー |
vbKey3 | 51 | 3 キー |
vbKey4 | 52 | 4 キー |
vbKey5 | 53 | 5 キー |
vbKey6 | 54 | 6 キー |
vbKey7 | 55 | 7 キー |
vbKey8 | 56 | 8 キー |
vbKey9 | 57 | 9 キー |
次の定数はテンキーの数字キーを表します。
定数 | 値 | 説明 |
---|---|---|
vbKeyNumpad0 | 0x60 | 0 キー |
vbKeyNumpad1 | 0x61 | 1 キー |
vbKeyNumpad2 | 0x62 | 2 キー |
vbKeyNumpad3 | 0x63 | 3 キー |
vbKeyNumpad4 | 0x64 | 4 キー |
vbKeyNumpad5 | 0x65 | 5 キー |
vbKeyNumpad6 | 0x66 | 6 キー |
vbKeyNumpad7 | 0x67 | 7 キー |
vbKeyNumpad8 | 0x68 | 8 キー |
vbKeyNumpad9 | 0x69 | 9 キー |
vbKeyMultiply | 0x6A | 乗算記号 (*) キー |
vbKeyAdd | 0x6B | 加算記号 (+) キー |
vbKeySeparator | 0x6C | Enter |
vbKeySubtract | 0x6D | 減算記号 (-) キー |
vbKeyDecimal | 0x6E | 小数点 (.) キー |
vbKeyDivide | 0x6F | 除算記号 (/) キー |
次の定数はファンクションキーを表します。
定数 | 値 | 説明 |
---|---|---|
vbKeyF1 | 0x70 | F1 キー |
vbKeyF2 | 0x71 | F2 キー |
vbKeyF3 | 0x72 | F3 キー |
vbKeyF4 | 0x73 | F4 キー |
vbKeyF5 | 0x74 | F5 キー |
vbKeyF6 | 0x75 | F6 キー |
vbKeyF7 | 0x76 | F7 キー |
vbKeyF8 | 0x77 | F8 キー |
vbKeyF9 | 0x78 | F9 キー |
vbKeyF10 | 0x79 | F10 キー |
vbKeyF11 | 0x7A | F11 キー |
vbKeyF12 | 0x7B | F12 キー |
vbKeyF13 | 0x7C | F13 キー |
vbKeyF14 | 0x7D | F14 キー |
vbKeyF15 | 0x7E | F15 キー |
vbKeyF16 | 0x7F | F16 キー |
-- --
Excel のユーザーフォームで KeyDown および KeyUp イベントがどのようなときに発生するのかやイベントが発生したときに呼び出されるイベントプロシージャの記述方法について解説しました。
( Written by Tatsuo Ikura )
著者 / TATSUO IKURA
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